学校生活

――自分だけ肌が汚いことが恥ずかしくてたまらなかった思春期

 生後4ヵ月の頃には体中に湿疹がありましたが、幼少期は喘息の方が重症であったため、特にアトピーを意識するようになったのは小学生になってからです。手足の関節の症状がひどくて、修学旅行の写真には脚に包帯を巻かれた姿が残っています。遊びに誘ってくれた友達に手を引かれた瞬間、肘の内側のかさぶたがバキバキっと割れて激痛が走ったことが、今でも忘れられません。症状としてはアトピーによるかゆみと痛みがとても辛かったですが、それ以上に、みんなと同じように過ごしたいのに自分だけ肌が汚いことが恥ずかしいという気持ちが強くて、精神的な痛みは小学校~高校とずっと続いていました。

――ダブルスクールと就職活動によるストレスもあり、アトピーが悪化した大学時代

 アトピーが成長と共に少し落ち着き、大学に入学する頃には、症状が出ても外用剤を塗ればすぐに炎症が引く程度になっていました。就職したい業界があったので養成学校にも通い始めましたが、ダブルスクールと就職活動のストレスが重なったこともあり、3年生からアトピーが少しずつ悪化していきます。そこで「もっと自分に合う治療があるのでは?」と考えていましたが、当時通院中だった病院では医師に相談することができず、インターネットでよい治療方法はないかと探していました。その後もアトピーは悪化の一途をたどり、かける皮膚が残らないほどに全身をかき壊してしまいます。ひどい痛みでベッドから出られなくなってしまったため、志望していた企業の内定も辞退することとなり、22歳の春に大きな挫折を感じました。

――5年半の間アトピーに耐え続け、現在の主治医にたどりつく

 そこから5年半ほどが経ち30歳手前になったくらいで、学生時代の友人は仕事に慣れて第一線で活躍していたり、結婚したりと、充実した生活を送っていることを耳にします。一方、私は、常にどこかの皮膚をかいていて、外出も家事もできず社会生活を送ることができません。アトピーの症状やストレスで疲れ切ったところに、母が「新しい病院に行こう」と言ってくれて、総合病院を受診することになりました。すぐに入院し、アトピーの適切な治療や正しい外用薬の使い方などを教えていただきました。10年以上経った現在も同じ主治医のもとに通院しています。

恋愛・結婚

――アトピーに関する正しい知識を身に着けたことで自信がつき、人生にも前向きになれた

 アトピーで外出できなかった頃、唯一会いに来てくれる男性がいました。当時は顔も真っ赤で滲出液が出ており、一目でアトピーと分かる状態でしたが、彼は肌のことには一切触れず、他愛もないおしゃべりをして私を支えてくれました。私のアトピーを心配しながらも傷つけるのが嫌で平静を装っていたようです。アトピーを共に乗り越えた彼とは、その後結婚して家族になりました。アトピーがひどい時は結婚や家庭を持つことなんて全く考えられず、両親のもとでしか生きられないと考えていました。アトピーと主体的に向き合っていく中で次第に自分に自信を持てるようになり、人生にも前向きになれたと思います。

家庭

――アトピーを理由に自分の人生を諦める必要はない

 結婚後は2人の子どもに恵まれました。妊娠・出産時は寛解状態を維持していたため、アトピーのために特別苦労した感覚はありません。生まれてきた子がアトピーになる可能性は考えたこともありますが、子どもがどんな状態であっても愛せる自信があり、アトピーによって自分が送りたい人生を諦める必要はないと考えました。むしろ正しい知識を持っている自分であれば、子どもがアトピーになっても適切なケアができるという自信がありました。

皮膚科を受診する際に心がけていること

――診察に向け、3ヵ月間の症状の変化や質問事項をノートにまとめる工夫をしている

 アトピーの治療では、医師に自分の状態を正しく伝えることも大切です。現在の主治医はコミュニケーションがとりやすいのですが、特別に診察時間が長いということはないので、診察前に症状のポイントや質問事項をノートにまとめる工夫をしています。また、限られた診察時間で密度の高いコミュニケーションができるよう、医師からの説明を待つだけでなく、患者としても普段からアトピーに関する情報を積極的に収集し、知識をアップデートしていくことが大切になると思います。

【アトピー患者さんへのアドバイス】

私自身は、いかにアトピーに翻弄されずに生きていくかが重要なポイントになると考えています。「アトピーだから○○できない」と考え始めると人生が狭まってしまうので、できる限りの対策をしながら、アトピーと折り合いをつけて自分らしく生きていくことを目指しています。今アトピーに悩んでいる方々も、分からない点や不安な点がある時は先生に相談して、アトピーとの上手な付き合い方を見つけてほしいと思います。

2024年1月 CIB46N018A
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